夏に見たくなる映画といえば何ですか? 海がテーマの涼し気な作品や、青春ものなんかもいいですね。そして夏の風物詩といえばやっぱりアイス!今年7月に公開された『アイスクリームフィーバー』は、見るとアイスが食べたくなる、夏にぴったりの映画です。
『アイスクリームフィーバー』はどんな作品?
川上未映子さんの短編「アイスクリーム熱」を原作に、アートディレクターの千原徹也さんが初監督を務めた映画です。境遇も年齢も異なる4人の女性の人生がまじわる、その儚い一時を描き出した作品で、ジャンルでいうとヒューマンドラマという感じです。映画のポスターから、同性愛がテーマなの?と思っている人も多いようですが、決してそういうわけではありません。
見た感想は?
一言でいうと、「なんだか幸せな時間を過ごした」という感想です。特に大きな事件が起きるでもなく、物語は淡々と進みます。普通の人たちの、普通の人生におけるちょっと素敵な一瞬を切り抜いた、という印象ですね。なのでドキドキの恋愛映画みたいなのを期待していると少し違うかもしれませんが、作品の中に流れる時間は、とても甘美なものでした。
登場人物
この物語は4人の女性が主人公となっており、それぞれの視点から描かれた人生がほんのり交錯していきます。
常田菜摘:吉岡里帆
元々勤めていたデザイン会社を辞めて、アイスクリーム屋でバイト中。まだデザイナーの仕事への心残りがあり、今後の人生を決めかねているところ。
桑島貴子:詩羽(水曜日のカンパネラ)
菜摘と同じアイスクリーム屋でバイトする高校生。親が転勤族のため、幼いころからあちこちを転々としている。
橋本佐保:モトーラ世理奈
アイスクリーム屋にふらっと現れた、どこかミステリアスな女性。ふとした事から菜摘と交流が生まれていく。この2人の関係が、本作における大きな盛り上がりどころの1つとなっている。
高嶋優:松本まりか
かつて恋人を実の姉に奪われ、それが理由で実感と絶縁中。突然転がり込んできた姪っ子の美和と、強制的に同棲生活が始まる。
作品みどころ
『アイスクリームフィーバー』の個人的見どころを紹介します。
①惹かれ合う2人
やはりポスターにもなっている、菜摘(吉岡里帆)と佐保(モトーラ世理奈)の関係性を抜きにしては、この映画を語れません! ここだけ見ると本当に同性愛カップルみたいで、グーグルのサジェストにも「百合」というワードが出てきています。でもこれは少し違うんです。
2人のやり取りが印象的で、アイスが好きな佐保に対して菜摘が「冷蔵庫があれば、私アイス作れるよ」というと、「じゃあ今度、うちにアイス作りに来てよ」と約束をします。しかしそのすぐ後に、菜摘は佐保の正体に気が付くんです。それがきっかけで、せっかく仲が良くなったのに、なんだか気まずくて顔を合わせられなくなった菜摘。
佐保が来店しても、カウンターの奥に引っ込んで隠れてしまう、そんな日々。でもある日、接客中に佐保に見つかってしまい、「アイス作りに来てよ」と改めて言われてしまいます。それから始まる2人の甘美な関係は、この映画のメインともいえるでしょう。繰り返しになりますが、ベタな同性愛とかそういうのではなく、ふとした感情の延長線みたいな感じです。
②優と家族のストーリー
私としては上記の2人よりも、優(松本まりか)とその家族の物語の方が印象的でした。交際していた男性を姉に奪われ、「泥棒猫!」と言い放つ優に対して、姉の愛は「負け犬」と言い返すシーンがあるんです。そんなこんなで絶縁した2人でしたが、姉の娘、つまり優の姪っ子が突然家にやってきます。その理由は、お父さんを探すため。ネタバレになるのでこの辺は触れませんが、元恋人を巡る新たな関係が生まれていくのも見どころです。
ちなみに姉の愛を演じているのは、安達祐実さん。まだ仲の良かったころに、優から愛に贈ったプレゼントがクライマックスに繋がるのですが、この時の優のセリフがすごく染みわたるんです。
③映像の芸術性
本作の監督を務める千原哲也さんはアートディレクターとして活動しており、映画を撮るのはこれが初めてです。千原さんらしいオシャレな色使いや、少し不思議なカットも特徴。特に菜摘と貴子が働くアイス屋さんが可愛くて、街で見かけたら思わず入ってしまいそうな雰囲気があります。
今だけ「猿田彦珈琲」とタイアップしています。映画を見た人はぜひ!
『アイスクリームフィーバー』の上映館
ハリウッド大作映画のように、全国どこでも上映しているわけではないので、お近くでやっているかどうかは以下の公式HPをチェックしてください。
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