乾くるみさんといえば、映画が話題になった「イニシエーションラブ」が有名でしょうか。
元AKB48の前田敦子さんの主演で話題を集め、純粋な恋愛映画と思わせておいての裏切りは、観客に予想外の驚きを与えてくれました。
今回紹介する作品にも「ラブ」という言葉が使われていますが、過去の小説を読んでいる方なら分かる通り、乾さんの描くラブは決して純愛ではありません。
どこかねじ曲がった、歪な形をした愛こそ乾作品の特徴ともいえます。
【ハートフル・ラブ】
今回の「ハートフル・ラブ」は短編集となっているので、各物語の感想を軽く述べていきます。
ネタバレは含みませんのでご安心下さい。
「夫の余命」
余命宣告を受け、残りの期間の過ごし方を模索する夫婦の話。
人間って利己的な生き物だなあ、と思わせる内容。
「同級生」
久々に再会した高校の同級生。果たしてそれは偶然か運命のめぐりあわせか。
話の違和感に気付いた頃には終わってました。
「カフカ的」
個人的に今作で一番面白かったです。
殺したいほど憎い相手がいる2人の女性が、足の付かないように交換殺人をしようという話。
「なんて素敵な握手会」
ザ・叙述トリック
「消費税狂騒曲」
平成から令和にかけて行われた増税が生んだストーリー。
よく税金と事件を絡めた話なんて書けるな、と思います。
「九百十七円は高すぎる」
こちらも続いて税金絡みのお話です。
同性愛者の女子高生2人が憧れの先輩をショッピングモールで発見。
先輩の買い物に対して、その友達が言った「917円は高い!」というセリフを盗み聞ぎし、先輩が何を買ったのかを血眼で探すという可笑しなストーリー。
「数学科の女」
今作のために書き下ろされた短編。
話のボリュームも全編の中で一番大きく、読み応えがありました。
男4、女1の大学生5人グループの中で、紅一点を巡る水面下の争い。
女の子のサイコパスっぷりは長編で読みたくなるようなどぎついキャラクターでした。
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