【小説紹介】『あの夏 2人のルカ』 (誉田哲也)

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高校生バンド。その響きだけでもう「青春」って感じがしてきませんか?
私は生まれてこの方楽器とは縁のない人生ですが、やっぱり音楽を出来る人への憧れというのはあります。
学園祭のステージで演奏をしていた当時の友達を思い出したこの一冊。
今回は誉田哲也さんの「あの夏、2人のルカ」を紹介します。

『あの夏、2人のルカ』

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この作品は、女子高生バンドの4人が過したひと夏の思い出と、大人になったとが交差する物語です。
物語は主に3人の人物の視点で進行。
バンド活動を行っていた高校生の頃は、バンド創設者の久美子の視点で。
大人になった今は、当時の転校生のヨウ(沢口遥)と、バンドメンバーの瑠香の兄である乾滉一の視点から、それぞれ描かれます。

「作品みどころ」

■女子高生バンド「RUCAS」

もともとバンドでドラマーをやっていた久美子は、新メンバーの加入によって実質的にクビという形で追い出されてしまう。
悔しさを味わった久美子は、絶対にやつらを見返してやるんだと意気込んで
新たなバンドの結成を目論む。そこで目を付けたのが、同じ高校に通う
翔子実悠。彼女らが課題活動としてギターを練習しているのを知り、
バンドをやらないか、と話を持ち掛ける久美子。クラスメイトの瑠香
楽器こそやらないが、音楽が好きという理由でマネージャーに。
ほぼ初心者の2人に、バンド経験者としてアドバイスをしながら練習を重ねていく日々。そんな時、森久ヨウという名の少女が転校してくる。
ヨウの歌唱力にを目を付け、久美子率いるバンドにお誘いし、彼女を加えた5人を正式メンバーとする女子高生バンドが結成。

というのが、バンド結成までのあらすじです。
全員が個性的なメンバーですが、特筆すべきは森久ヨウ。
幼いころにピアノをやっていた以外は楽器は触ったことが無い、というヨウですが、圧倒的なセンスでギターの演奏をものにします。
作詞、作曲も担当し、聴くもの全員が呆然とするほどの歌声の持ち主でもある彼女。
この一見オールマイティな転校生ですが、頭は抜群に悪い。
同じく成績の悪い久美子に対し、先生が「あの森久さん以下」と揶揄するほどには勉強が苦手らしい。
外見についての描写は、久美子視点だと「こけし」などと表現されており、
大人になったヨウを見た滉一視点では「雪女」と言われています。
とにかく「和」を感じる女性なのでしょうね。

バンド名の「RUCAS」ですが、これにはヨウの名前が関係しています。
ヨウの本名は「森久遥(ハルカ)」。しかしヨウ本人はとある理由から自分の名前を気に入っておらず、「森久」と呼ばれるのも、「遥」と呼ばれるのも嫌います。
遥という漢字を音読みして、「ヨウ」。彼女はこの偽名を使って高校生活を送っています。
その事実を知った久美子ですが、バンド名を考える際に、この「ハルカ」という名前をネーミングに組み入れます。
メインボーカルでバンドの顔である「ハルカ」と、マネージャーである「瑠香」の名前に共通する「ルカ」という2文字。
楽器は弾かないが、瑠香も大事なメンバーの1人だという意味も込めて
2人のルカ、複数形にしてルカズ、ちょっとひねってルーカス、「RUCAS」という名前に決定したのでした。

このバンド名が、大人になったヨウ(そのころは旧姓に戻って沢口遥となっている)が、瑠香の兄である滉一と出会う切っ掛けになります。


「感想」
高校の放課後、風に乗って聞こえてくる軽音楽部の演奏が耳に蘇るようなストーリーでした。
最初は部活程度だったバンドが、音楽プロデューサーの久美子の従兄が関わるようになってからメジャーデビューの話を持ち込まれ、有名になりたい久美子と、ただRUCASの皆とバンドをやりたいだけ、というヨウの間に生まれる壁。
そういうぶつかり合いも青春の一つだと感じます。雨降って地固まる、といいますが、一度は本気で衝突しないと生まれない関係性っていうのもあります。
そして時を経て、また動き出す物語。過去と現在の交差をうまく表現した
素晴らしい青春物語でした。

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