日本では毎年2万人以上が自殺によって亡くなっています。
電車への飛び込み、建物からの飛び降りなど、手段は様々ですが
無関係の他人にまで迷惑をかける死に方を選ぶ人が多い現状。
通勤途中に人身事故で電車が止まった時、誰もが一度はこう思うのではないでしょうか?「死ぬならもっと、ひっそり死んでくれ」と。
今日の映画は、そんな自殺願望を持つ人向けの「自殺用品専門店」が舞台です。
スーサイドショップ
「4コマあらすじ」
「作品みどころ」
町の人々は常に死にたがっている。店では手軽に死ねるグッズが買える。
見事に需要と供給のバランスが取れているわけだ。
訪れる人はそれぞれの理想の死に方を探しており、ミシマたちは
自殺コンサルとして相談にも乗っている。
「拳銃自殺は音が五月蠅い、毒薬なら簡単に死ねますよ」といった具合。
店では首吊り用の縄、毒薬、拷問器具など、命を絶つためのグッズがとても豊富に揃えられており、リピーターなど発生しないはずの商売なのに
常に客が途絶えない人気店である。
ちなみに公道での自殺は法律で禁じられており、客がそのあたりの歩道で
拳銃自殺をした際は、「あの野郎、やりやがったな!」と怒るミシマのシーンも。
特筆すべきはアニメーションの美しさだ。
日本のアニメとも、アメリカのものとも違う。どこを切り取っても絵本か絵画の一枚に見えるほどの芸術的な作風。
特に店内はお洒落な洋菓子店のような装いで、まさか自殺用品を取り扱う店とは思えない。それに対して町は陰鬱でシックな色彩で描かれており、自殺願望溢れる人々の心情を表しているようである。
ミシマ一家の間に生まれた赤ん坊は、笑顔一つなく育てられたにも関わらず
明るく前向きな子に成長してしまう。
自殺願望なんて抱かないのは勿論の事、自殺しようとする周囲の人間に対して人生の楽しさを教えてくれる。
一家の中でも特にミシマはそんな息子を忌み嫌っており、なんなら殺してしまおうとまで考える。
しかし妻や兄妹たちは徐々に心を絆されてゆき、実は自分にも夢があったんだという事に気づいていく。
「コメント」
美しいアニメーションと陰鬱な設定の対比が素晴らしい映画です。
冒頭から首吊りや服毒自殺のシーンが描かれており、結構ショッキングな幕開けですが、この町に漂う絶望的な空気を感じさせてくれる序章。
そして赤ん坊が生まれてからの家族の心境の変化、といったように
物語の構成も非常に分かりやすいです。
ところどころミュージカルシーンもあり、特にミシマ一家が歌う
スーサイドショップのテーマソングはゴシックな曲調で耳に残ります。
主人公のミシマはフランス人ですが、日の丸のハチマキを締めていたり、
日本刀で切腹を提案するシーンから分かる通り、完全に三島由紀夫から
着想を得たキャラクターです。
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